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1.給与を支払うようになったら、毎月給与計算をしましょう

1.給与計算

役員や正社員・パート・アルバイト等の従業員を雇用したら、給与を支払わなければなりません。給与の支払いは、毎月発生する重要な経理事務です。社長個人の役員報酬のみである場合には定額の給与ですが、従業員を雇用するとなると、毎月の残業手当や通勤手当等を含めた正確な給与計算をしなければなりません。さらに、総支給額の計算だけでなく、社会保険料や所得税といった様々な控除項目も計算する必要があります。給与計算は非常に複雑ですが、一度作業を覚えると、毎月繰り返せばよいルーティンワークになります。まずは基本の流れを把握し、コツをつかみましょう。

1-1.給与支給の流れ

(1) 出勤簿をとりまとめる

締め日がきたらタイムカードや出勤簿を回収し、各従業員の出勤日数、労働時間、時間外労働時間、欠勤、遅刻、早退などの勤怠をとりまとめます。

(2) 基本給を計算する

基本給とは、ベースとなる給与のことで、法定時間内労働の対価として支払われます。従業員によって異なりますので、従業員との間で取り交わした労働条件通知書などでよく確認しましょう。

(3) 残業手当を計算する

出勤簿やタイムカード等で労働時間を集計します。集計にあたっては、法定時間内労働、法定時間外労働(所定労働時間を超える労働)、深夜労働(午後10時から午前5時までの労働)、法定休日労働を区別し、法定時間外労働、深夜労働、法定休日労働は、残業手当として計算します。残業手当は、通常、時間単価に割増率と残業時間を乗じて算出しますが、就業規則や給与規定等で定めた場合には、それに基づいて算出します。時間単価の求め方は少々複雑なので注意しましょう。

(4) 通勤手当を計算する

通勤手当は、源泉徴収税額表にあてはめる「給与」の金額には含めませんが、労働保険料を計算する際の「給与」の金額には含めます。通勤手当は、一定金額までは非課税扱いとなり、その限度額は、通勤距離や手段などの条件により細かく定められています。上限を超えた部分は所得税が課されますので注意しましょう。

(5) その他の諸手当を計算する

その他の諸手当には、役職手当(部長や課長などの管理者に対して支給される手当)、住宅手当(従業員の住宅維持のために支給される手当)、家族手当(従業員の家族の扶養のために支給される手当)などがあります。すべての諸手当を計算したら、基本給と合算して総支給額を確定させます。

(6) 社会保険料を控除する

総支給額が決定したら、次は控除項目を計算します。社会保険料とは健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料のことです。介護保険は40歳以上65歳未満の医療保険に加入している人が対象となる保険です。社会保険料は、従業員の収入に応じて決められた標準報酬月額と保険料額表から、標準報酬等級に応じた保険料を控除します。標準報酬月額は、毎年7月に基礎算定届を提出すると、9月までに「標準報酬月額決定通知書」が送付され、決定されます。基礎算定届の提出手続きについて詳しくはこちらをご覧ください。なお、社会保険料は、翌月徴収(給与支給日に控除する社会保険料は会社負担分とあわせて月末に納付)なので注意しましょう。社会保険料の納付は口座振替が便利です。口座振替の手続きについて詳しくはこちらをご覧ください。

(7) 労働保険料を控除する

労働保険料とは、雇用保険料と労災保険料のことです。雇用保険料は上記の社会保険料と異なり、総支給額が変わる度に計算します。総支給額には各種手当を含みます。雇用保険料は、この総支給額に雇用保険料率を乗じて算出します。雇用保険料率は会社の業種により異なりますので、雇用保険料率表で確認しましょう。労災保険料は全額会社負担となるため給与の控除項目には該当しません。なお、労働保険料は、毎年7月の年度更新の時に、前年度に支払った概算保険料に対する過不足を精算する方法で納付します。年度更新について詳しくはこちらをご覧ください。

(8) 所得税を控除する

所得税は、源泉徴収税額表に給与額をあてはめて計算します。給与額とは、総支給額から非課税分の通勤手当、社会保険料及び雇用保険料を差し引いた金額をいいます。源泉徴収税額表には甲欄・乙欄・丙欄の区分があり、日雇は丙欄、日雇以外は扶養控除等申告書の提出の有無で判断します。提出がある場合は甲欄(給与額と扶養親族等の数により所得税が決定)、ない場合は乙欄(給与額のみで所得税が決定)で確認します。なお、源泉徴収税額表には月額表(月、半月、10日ごとに支給)と日額表(日、1週間ごとに支給)の2種類があり、給与の支給方法によってどちらを使用するか異なりますので、よく確認しましょう。所得税の納付について詳しくはこちらをご覧ください。

(9) 住民税を控除する

住民税は、その月の給与の金額とは関係なく、前年度の所得額を基準として課税・徴収されます。住民税の計算は、会社が行う必要はなく、従業員の住所地の市町村役場から通知される特別徴収税額通知書に記載されている金額をそのまま控除します。特別徴収税額通知書は毎年5月末までに会社に送付されます。住民税の納付は、特別徴収通知書に同封されている納付書に基づき、各年度1月1日の従業員の住所地の市区町村役場に納付します。納付期限は、給与から差し引いた月の翌月10日までですが、納期の特例があり、常時9人以下の会社は申請をすると年2回(6月10日と12月10日)にまとめて納付できます。なお、住民税の納付は前年度の所得額に基づくため、法人設立後の一期目については、以下の場合のみ、給与計算時に特別徴収する必要があります。

・社長が脱サラして起業したケース→前職分の住民税を役員報酬から控除することとした場合

・従業員を採用したケース→前職分の住民税を特別徴収してほしいといわれた場合

上記以外のケースでは、一期目については住民税の特別徴収は発生しませんので注意しましょう。

(10) 給与台帳と給与明細書を作成する

総支給額と全ての控除項目を計算したら、最後に給与台帳と給与明細書を作成します。給与明細書に欠かせないのは、次の4項目です。

・勤怠に関する項目

出勤日数、欠勤日数、有給休暇日数、法定時間外労働、深夜労働、法定休日労働などについて記載します。

・支給に関する項目

基本給や諸手当を記載し、総支給額を記載します。

・控除に関する項目

健康保険料、介護保険料、厚生年金、雇用保険、所得税、住民税など、給与から差し引いた金額を記載し、控除合計額を記載します。

・差引支給額

総支給額から控除合計額を差し引いた金額を差引支給額として記載します。

これらの項目が記載された給与明細書を作成したら、忘れずに従業員ごとに源泉徴収簿に記載しましょう。

(11) 銀行振込の手続きを行う

振込手続きは、銀行窓口へ振込依頼書を持ち込むか、インターネットバンキングで給与振り込み処理を行います。銀行振込の場合は、支払日の3営業日ぐらい前までに手続きをすませるようにしましょう。現金支給の場合は、支払日までに現金を用意するようにしましょう。支払日当日に給与明細書を従業員に渡したら、一連の作業が完了です。

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