1.年末調整と法定調書の提出
年末調整とは、給与支払い時に預かった源泉徴収税の年間の税額合計と、実際に支払った年間の給与総額に対して納めなければならない税額を比べて、その過不足を精算する手続きをいいます。また、法定調書の提出とは、源泉徴収票や支払調書など支払いに関する資料を税務署に提出することをいいます。年末調整および法定調書の提出は毎年11月頃から1月末にかけてやらなければならない大切な経理業務です。ここでは手続きのポイントを解説します。
1-1.年末調整を行う時期
年末調整は、その年の最後の給与の支給日までに行わなければなりません。毎月給与を支給している場合は、12月の給与支給日までに行う必要があります。なお、年末調整の対象となる給与は、その年の1月1日から12月31日までに支給日が到来する給与です。
1-2.年末調整の対象者
年末調整の対象者は、原則、1年を通じて勤務している従業員(役員、パート、アルバイト等含む)のうち、源泉徴収税額表の甲欄に該当し、給与総額が2000万円以下の従業員です。このうち、以下にあてはまる人も対象になります。
1-3.年末調整の流れ
その年の最後の給与支給日の25日前までに、年末調整の対象となる従業員に「扶養控除等申告書」「保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」「年末調整のお知らせ」を配布し、記入してもらいます。回収は、最後の給与支給日の15日前までに行いましょう。
その年の1月1日から12月31日までに支給日が到来する給与及び賞与の総額と、毎月行った源泉徴収税額を算出します。
給与所得控除とは、給与所得者の経費として給与等の金額に応じて定められた控除です。「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に、(2)で確定した給与及び賞与の総額を当てはめて、給与所得控除後の給与等の金額を算出します。
(1)で回収した書類をもとに、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、障害者控除、生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)等の控除項目を計算し、控除額を確定させます。
(3)で算出した給与所得控除後の給与等の金額から、(4)で確定した控除額を差し引き、課税給与所得金額を算出します。「年末調整のための算出所得税額の速算表(年税額速算表)」に当てはめて計算し、年税額を確定させます。
その年の1月1日から12月31日までの間に源泉徴収を行った源泉徴収税額と、(5)で確定した年税額との過不足を計算します。源泉徴収税額のほうが多い場合は、その年の最後の給与支給時に還付し、足りない場合は不足額を徴収します。
1-4.法定調書の提出
法定調書とは、税務署への提出が義務付けられている支払いに関する書類で、数十種類あります。法定調書の提出期限は1月31日(土日の場合は休み明けの日)です。代表的な法定調書は以下の通りです。
150万円を超えて支払った役員給与、250万円を超えて支払った弁護士・税理士・司法書士等への給与、その他500万円を超えて支払った給与がある場合に提出します。
50万年を超えて支払った外交員、ホステス等への報酬等、5万円を超えて支払った弁護士・税理士・司法書士、デザイナー等への報酬等がある場合に提出します。
その年の1年間に行った、役員報酬、給与手当、報酬、退職金、家賃、仲介手数料の支払いや建物・土地の購入に関する支払金額を記載し、提出します。提出の際は、給与所得の源泉徴収票と退職所得の源泉徴収票・特別徴収票も添付します。(添付の要否は従業員の区分と支給金額により異なります。)
上記の他に、不動産の使用料等の支払調書など数多くの支払調書があります。事前に各支払調書の対象となる取引と金額をよく確認したうえで、総勘定元帳と照らし合わせ、抜け・漏れや記入ミスのないよう注意しましょう。
1-5.給与支払報告書の提出
法定調書の提出期限と同じ1月31日までに、「給与支払報告書(総括表)」も作成し、市区町村に提出する必要があります。給与の源泉徴収票の内容を市区町村に知らせるために行うもので、役員を含むすべての従業員の分を作成します。提出先は、提出する年の1月1日時点の従業員の住所地にある市区町村です。提出書類は、従業員ごとに給与支払報告書2枚ずつと、提出先の市区町村ごとに給与支払報告書総括表1枚です。提出は窓口への持参のほかに郵送も可能となっています。