
6.法定相続情報証明制度
1. 制度の趣旨
相続手続では、被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本、相続人全員の戸籍など、多数の公的書類を各金融機関や法務局にそれぞれ提出する必要があり、手間と費用がかかっていました。
**法定相続情報証明制度(2017年開始)**は、これら戸籍一式を法務局に一度提出し、登記官が確認したうえで「法定相続情報一覧図の写し」を交付するものです。これにより、相続登記や銀行・証券会社での解約手続、相続税申告などで、戸籍束を何度も提出する必要がなくなります。
2. 利用主体
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申出人:法定相続人本人
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代理人:法定代理人、民法上の親族、資格者代理人(弁護士・司法書士・税理士・行政書士など)
3. 管轄法務局
申出先は次のいずれかの法務局(登記所)です。
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被相続人の本籍地
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被相続人の最後の住所地
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申出人の住所地
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被相続人名義の不動産所在地
4. 必要書類
(1) 被相続人関係
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出生から死亡までの戸除籍謄本一式
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住民票除票または戸籍附票
(2) 相続人関係
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相続人全員の戸籍謄本(必要に応じ住民票)
(3) 作成書類
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法定相続情報一覧図(家系図形式で相続人関係を示す)
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申出書(交付希望部数、受領方法〔窓口・郵送〕を記載)
(4) その他
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本人確認書類(運転免許証等)
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代理人の場合は委任状
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郵送希望の場合は返信用封筒・切手
5. 申出手続きの流れ
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必要な戸籍・住民票を収集する。
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法務局ホームページの様式に従い、一覧図と申出書を作成。
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書類を法務局に持参または郵送提出。
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登記官が確認後、法定相続情報一覧図の写しを交付。戸籍謄本等は返却される。
6. 交付と保存
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交付手数料:無料(戸籍取得費用や郵送費は別途)
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必要部数を複数交付可能
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法務局にて5年間保管され、その間は再交付可能
7. 有効性と利用範囲
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証明書自体に法定の有効期限はない。
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ただし金融機関等が「発行から○か月以内」といった独自の期限を設けることがある。
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利用可能先:相続登記、銀行・証券会社・保険会社での名義変更や払戻し、相続税申告書類など。
8. 留意点
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本制度は「法定相続人の確定」のみを証明する。
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実際の分配内容は示されないため、金融機関では遺産分割協議書や本人確認書類を別途要求される。
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外国籍相続人や戸籍が揃えられないケースでは利用できない場合がある。
9. 実務チェックリスト
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被相続人の戸籍(出生~死亡)
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被相続人の住民票除票
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相続人全員の戸籍・住民票
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法定相続情報一覧図(作成済み)
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申出書
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本人確認書類・委任状(代理人の場合)
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返信用封筒(郵送希望時)
まとめ
法定相続情報証明制度は、相続実務において戸籍一式を繰り返し提出する負担を軽減する有効な仕組みです。費用は無料で、5年間は再交付も可能です。相続登記の義務化(2024年4月施行)との関係でも、今後さらに利用機会が増えると見込まれます。





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